世界(せかい)スイッチ

世界のアイデアで海のピンチを乗り越えろ!

ザザーという波の音。そよかぜはしおのにおいがして、空を見上げるとカモメが飛んでいる。ここは広い海に浮かぶ島「スイッチ島」。

この平和な島の人たちはみんな、海が大好き。だけれど、なんとその愛する海にいろいろなピンチがせまっているという!

そこで、地図に書かれたヒントをたよりに、スイッチ島を探検しながら、どうやって海のピンチを乗りこえていけるのかみんなにも考えてもらいたい!

そして、ピンチを乗りこえた先にある、ハッピーなスイッチ島のすがたをいっしょに見に行こう!

(海のピンチをクリックして、どんな方法でピンチを乗り越えたのか見てみよう!)

灰色の山灰色の山

まちはずれの灰色の山

山の正体は…
貝がら!?

スイッチ島ではとってもおいしいかき(貝)がとれる。島の人はかきが大好物で、島の外からもかきを食べにたくさんの人が来る。

ただ、実はまちのはずれに大きな船ほどもある灰色の巨大な山がいくつもできているのは知っているだろうか?

そう、その山をつくっているのはかきのカラなのだ。かきガラはなかなか土にかえらず、また燃やすこともむずかしい。なので仕方なく山積みにしていたのだ。このままでは、スイッチ島がかきガラでうめ尽くされてしまう!

くだいて、
まいて、
山も海も豊かに

調査をすると、かきガラを活用するアイデアが日本で見つかった! 場所は瀬戸内海(せとないかい)。そこでは毎年約13万トン(飛行機860機分ぐらい!)にもおよぶかきガラが捨てられていて困っていたそうだ。

そこで、岡山県のJAグループ岡山が行う「瀬戸内かきがらアグリ」では、粉にしたかきガラを田んぼや畑にまいたり、肥料やニワトリのエサにしたりしているという!

実はかきガラには良い栄養がたくさん含まれていて、その肥料でできたナスやレタス、お米や卵はとてもおいしくなるそうだ。さらに、かきガラの粉を海にまくと、生きているカキと同じように水をきれいにする力がある。ごみとして山積みになっていたかきガラで、山も海も豊かにできるかもしれない!

Image via JAグループ岡山
かき(貝)をもっと知ろう!
砂浜のごみ砂浜のごみ

砂浜に増える、
まちのごみ

まちからごみが
流れてくる!

かつて、スイッチ島には美しい砂浜が広がっていた。しかし、いつから変わってしまったのだろう。砂浜がごみでうめ尽くされるようになり、海の生き物の泣く声が聞こえてくるようになった。

砂浜に遊びに来た人がごみを捨てているのかというと、必ずしもそうではない。実は、海からはなれたまちで捨てられたペットボトルやおかしのふくろのごみが川をつたって、たくさん砂浜に流れ着いているのだ。

そして特にピンチなのが、まちの人はそれを知らないということ。このままでは砂浜にどんどんごみが増えていってしまう…!

アートで届け、
海の声!

みんな! この写真を見てほしい! これはインドネシアのバリ島で開かれた、海ごみから作ったドレスのファッションショーだ!

拾ったごみをワクワクするようなドレスに生まれ変わらせて、ステージで発表する。子どもたちならではのすばらしい発想で、ステージを見る人もワクワクしていたぞ。

さらに日本でも、海ごみアーティストのあやおさんが海ごみを使って海の生き物のアートを作っている! マンタ、キンメダイ、メンダコなど、たくさんの種類があり、色や形の違うごみを使い分けていてとてもリアルだ。

写真の魚も、みんなは分かるだろうか?よく見るとせんたくばさみや電球なども入っていて、宝さがしのようで楽しい。人の心をひきつけるアートの力で、まちの人たちにも砂浜がごみだらけになっていることに気付いてもらえるかもしれない!

Photo by mia(左)/ Image via 日本財団(右)
ごみを宝物に変える
アイデアを知ろう!
ごみ拾いごみ拾い

どうしてごみを
拾わないの?

ごみ拾いって、
つまらない?

アートの力により、スイッチ島に流れ着くごみの問題は多くの人が知るところとなった。しかしだ。「ごみのないきれいな海岸がいい」とみんな思っているものの、流れ着いたごみを拾う人はほとんどいない。

そこで砂浜にいる人になぜ拾わないのかきいてみると、「だれかが落としたものを拾いたくないわ」「ごみ拾いはつまらないよ」「ごみを全部拾うなんて無理に決まっている」との答えが…。うーん、確かにその気持ち、分からなくはない…。だれか、みんながごみを拾いたくなるアイデアを教えてくれ!

おかしがもらえる!? 
ヒーローに会える!?

すばらしいアイデアを見つけたぞ! おとなりの国、韓国(かんこく)の「SEANACK(シーナック)」キャンペーンで、砂浜に現れたトラック。そこに拾ったごみを持って行くと、なんとおかしと交かんしてくれるという! しかも、ごみをたくさん拾えば、たくさんのおかしをもらえるそうだ。

そして日本にもごみ拾いをしたくなる取り組みがあった! 神奈川県(かながわけん)の江の島(えのしま)を中心に活動している「海さくら」という団体が、「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い!」をかかげている。おすもうの力士やスポーツチームと一緒にごみ拾いをしたり、「海洋戦士シーセーバー」というヒーローが砂浜に現れたりする日もあるとか!

そこには、みんなで海をきれいにして、海で遊ぶ人をもっと増やしたいという思いがある。ごみ拾いはつまらないなんてもう昔の話だ。楽しくごみを拾いながら、一緒に砂浜ではじけちゃおう!

Image via Cheil Worldwide(左)/ 海さくら(右)
海底のごみ海底のごみ

海の中から
聞こえる悲鳴

海の底にも
たくさんのごみ

スイッチ島の砂浜がごみでうめつくされた事件。砂浜に流れ着いたごみは世界各国のクリエイティブなアイデアにより解決されたように思われたが、今度は海の中から悲鳴が聞こえてきた!

そう、海底にもごみがたまっているのだ。実は海洋ごみの多くは海にしずむため、私たちの見えないところで魚や海の生き物が苦しんでいる。その上、海底のごみを拾うのはとてもむずかしい…。どうしたらよいだろうか?

ごみを拾うのは、
クラゲ!?

聞いてくれ! すばらしいニュースがまいこんできた! なんとドイツの研究機関が「Jellyfish-Bot(ジェリーフィッシュ・ボット)」と呼ばれる、クラゲの形をした水中ごみ拾いロボットの開発を進めているらしい!

クラゲの泳ぎやエサの取り方をまねして作られたこのロボット。泳ぎながら海底のごみを拾うことができるという。さらに、少ないエネルギーで動かすことができ、音も立てないので周りの生き物をびっくりさせることなく、そうじを行うことができるのだ。

クラゲロボットの力で、スイッチ島の海底のごみも回収できそうだ!

Image via Shutterstock(左)/ EuroEAP(右)
生きものをまねして、
困りごとを
解決する
アイデアを知ろう!
リサイクルリサイクル

海ごみにこれだけ
種類があるなんて!

むずかしい言葉、
覚えきれないよ…

砂浜や海の中のごみの問題があったので、島の小学校の子どもたちは「海ごみ」について学ぶことになった。

しかし、島とはいえ、海から小学校までは50キロもはなれていて、「海ごみ」と言われても、よく想像できない。特に、たくさん捨てられているプラスチックの話には「ポリエチレン」「ペット」「PP」など、むずかしい言葉が出てきてちんぷんかんぷん!

そのうちやる気もなくなってきた…。まさか学校にもピンチがおとずれるとは! 海からはなれている場所でも海洋ごみをわかりやすく、そして楽しく学べる方法がないものか…?

覚える方法は、
ゲームに夢中に
なること!

画期的なアイデアを見つけたぞ! それはズバリ、カードゲームだ! 学校でゲームなんてびっくりするかもしれないが、この「Recycle Master(リサイクルマスター)」は海ごみをテーマにしたカードゲームで、なんと遊びながら海ごみ問題やそのリサイクルの仕方を学ぶことができる。ペットボトル、ビニールぶくろ、つりばりなど、海に落ちているごみがキャラクターとしてえがかれていて、むずかしいふんいきもゼロだ。

基本のルールは、海岸のごみを手持ちの「リサイクルカード」でリサイクルしながら点数を集めていくという、とても簡単なもの。だが、現実と同じように、プラスチックの種類が細かく分けられていたり、同じ材質のごみをまとめないとリサイクルできなかったりといったルールがゲームをとてもおもしろくしていて、大人もついつい熱中してしまうほど。これならゲームに夢中になりながら、知らないうちに海ごみにくわしくなれそうだ!

Photo by Ryuhei Oishi
遊びで世界を救う
アイデアを知ろう!
海鳥のけが海鳥のけが

魚をとるあみに、
海鳥が!

海鳥をきずつけ
たくないよ…

ある日のこと、スイッチ島の沖で漁をしていた漁師から電話がかかってきた。

「大変だ! 魚に群がる海鳥が、たくさんあみにかかって苦しんでいる!」

実は同じような状況が、世界各地で起きていた! 魚をとるあみやはりに引っかかったり、あみと船をつなぐロープにぶつかって、毎年たくさんの海鳥がけがをしたり命を落としてしまっているという。

つかまえたい魚以外の生き物をつかまえたり傷つけたりしてしまう「こんかく」と呼ばれているこのピンチ。海鳥を助ける方法はないだろうか?

鳥たちに危険を
知らせる
「トリライン」

この南アフリカの漁船を見てほしい! あみやロープの上に、黄色い旗のようなひらひらがついた別のロープが張ってある。この黄色いロープは「トリライン」と呼ばれている。海鳥に「ここにあみやロープがあるぞ」と分かりやすく知らせ、あみに近づいたりロープにぶつかったりするのを防ぐことができるんだ。かつて南アフリカでは1年に14,000羽もの海鳥が命を落としていたが、トリラインのおかげでその数はずいぶん減ったという。

この「トリライン」は英語でも「tori line(‘トリ’ライン)」と呼ばれている。そう、実はもともと、日本の漁師さんが考えたしかけだった! 日本の海のアイデアが、遠くはなれたアフリカの海のピンチも救っているんだね。これはスイッチ島の漁師にも知らせなくては!

Image via Shutterstock(左)/
Shutterstock画像をもとにハーチ株式会社による作成(右)
漁業の問題をもっと知ろう!
しずむまちしずむまち

家やまちが、
海にしずむ!?

地球温暖化で
増える海の水

ここ数年、スイッチ島の海辺のまちから「大雨や台風の度に海の水があふれて家の中まで入ってくる」という情報が相次いでいる。実はこれ、「地球温暖化(ちきゅうおんだんか)」と関係している。「地球温暖化」とは、ものや電気を作る時に燃料を燃やすなど、主に人間のくらしの中で生まれた二酸化炭素などによって地球全体の気温が上がっていくこと。気温が上がると、北極・南極、雪山の氷がとけて、海の水が増えてしまうんだ。

調査によると、世界の海の水面が、30年前と比べてすでに10cm近くも上がっているようだ。そして、もしこのままのスピードで地球温暖化が進めば、2100年には最大1m以上も上がってしまうと計算されている! これが起きれば、海辺の家はもちろん、海に近い東京やニューヨーク、ジャカルタなど世界のまちに海水が入り込んでくるかもしれない!

これはスイッチ島だけではない、世界のピンチだ!

足のある家!? 
うかぶまち!?

このピンチを乗り越えるためには、地球温暖化のスピードをゆっくりにすると同時に、海の水面が上がったとしても快適に住める方法を考えなくてはいけない。そこで見てほしいのが、南米・チリのチロエのまちにある、「パラフィトス」と呼ばれる住宅だ。海岸や河口にあるパラフィトスは、高い柱の上に立っている。そのため、水が上がっても安心で、しかも床下に風が通るので、じめじめしづらくて居心地よく住めるようになっている。カラフルな色もチャームポイントだ。

さらに、韓国の釜山(プサン)では、「まち自体を水面に浮かべる」というだいたんな発想のプロジェクト「OCEANIX Busan(オーシャニクス・プサン)」が進められている! 水の上の土地に家やレストラン、ホテルや研究所、農場まで作ってしまう計画だという。これらのアイデアと、地球温暖化をゆっくりにする努力で、海の水が上がるピンチも乗り越えられそうだ!

Image via Shutterstock(左)/
Image via OCEANIX / BIG-BjarkeIngelsGroup(右)
地球温暖化(気候変動)
をもっと知ろう!
世界のアイデアで、
みんなの海をハッピーに!

世界中のアイデアを使って、スイッチ島の海は無事にピンチを乗りこえた。ほっと胸をなでおろした島の景色は、なんだかとっても楽しそう!

スイッチ島と同じように、みんなが住んでいる日本も島国で、海に囲まれている。もしかしたら、スイッチ島と同じようなピンチが身の回りでも起こっているかもしれない! さらに、海は世界とつながっているから、日本の海のピンチが世界の海のピンチになってしまうかもしれない!

でも大丈夫。スイッチ島でたくさんのアイデアを知ったみんななら、日本の海のピンチも、世界の海のピンチも乗りこえるアイデアを見つけられるはずだ! そして、ピンチを乗りこえた先には、きっと、スイッチ島のように海や島、そこでくらす生き物や人もハッピーな景色が広がっているんだ。

もし海に行ったら、今回の探検での発見を思い出してみてね!

情報提供:IDEAS FOR GOOD(ハーチ株式会社)