政治家とはいったいどういう人を指すのだろう。公職選挙法や政治資金規正法などによると、政治家とは国会議員、地方公共団体の長、地方議会の議員、及びその候補者、となっている。地方公共団体の長は、都道府県の知事、市町村長のこと。地方議会は県や市町村の議会である。基本的には住民の選挙によって選ばれるが、町村長選挙や地方議会選挙などでは、現職に対抗する者がいなかったり、候補者の数が定数を下回ったりするようなこともある。任期は原則4年(参議院議員は6年)、また衆議院議員は25歳以上、参議院議員は30歳以上、のように被選挙権が定められている。
政治というのは日頃もっともよく目にする言葉だが、それが正確に何を意味するのか、わかりにくい。政治家とは人びとの暮らしを守り、より良くするために活動する人、なのだろうか。しかし、NPOやNGOや宗教家や公務員など、人びとの暮らしを守り、より良くするために活動する人はほかにも大勢いる。そもそも政治とは何か、と考えるとこれもきわめてわかりにくい。ひょっとしたら政治家ほどわかりにくい職業はこの世にないかもしれない。この本は職業を定義するためのものではないので結論を先にいうが、世の13歳はこんなにわかりにくい職業を目指すべきではない。
政治家は、さまざまな集団・グループの利害の調整のための方法を考え、実行する。それは実はものすごく面倒くさくて、割の合わない仕事である。集団内のすべてのグループやすべての人が満足する政策などあるわけがないので、政治家は誰かに恨まれる。だから、シーザーの時代から現代まで、暗殺される人の大半は政治家だ。第二次大戦後、お隣の韓国では、政権交代があると必ず前政権の中枢にいた人たちが暗殺されたり逮捕されたりしてきた。それは彼らが権力の中枢にいたときに誰かの恨みを買ったからだ。日本でも、幕末や戦前には多くの政治家が暗殺された。だが今の日本では、政治家が割の合わない仕事だという意識が少ない。それは、戦後の日本が経済成長を続けてきて、利益の分け前をほとんどすべての国民に分配することができたからだ。生活がどんどんよくなっているときは、どんどん大きくなるパイをみんなで分ければいいわけだから、ほとんどの人は不満を持たない。
不満を持つどころか、逆に、分配される利益を少しでも多くしてもらおうと政治家にごまをすりながら群がっていくので、戦後の日本では政治家というのは基本的にずっとおいしい職業であり続けた。政治家には不可欠のものなので、権力欲はあってもかまわないし、声が大きいとか、面の皮が厚い(神経が太い)とか、面倒見がいいとか、異常に体力があるとか、権謀術数に長けているとか、そういう面があってもいい。だが、将来的には、NPOやNGOなどで国際的に活動してきて、利害調整の困難さと重要性を理解した人がやむにやまれず政治に参加するようになればいいと思う。あるいは企業活動と環境保護の調整に長く深く関わった人とか、企業や銀行を見事に再生させた人とか、地域社会や教育の活性化にたずさわった人とか、そういった分野から政治家が現れるようになるべきだ。
権力欲があって、声が大きく、面の皮が厚く(神経が太い)、面倒見がよく、異常に体力があって、権謀術数にも長けている13歳は、最初から政治家を目指すのではなく、NPOやNGOなどで、知識とスキルを磨き、体験を積むことを勧めたい。
もっと見る(13歳のハローワーク 公式サイト)
情報提供元: 13歳のハローワーク 公式サイト (外部サイト)