2020年東京五輪そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートたちを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第2回は岐阜県出身、競泳の今井月(るな/豊川高)を紹介する。
高校1年でリオデジャネイロ五輪に出場。200メートル個人メドレーの準決勝に進出したが、得意の平泳ぎに課題も【写真は共同】
豊川高校に進学した16年は、今井にとってももうひとつのターニングポイントとなった。それは、今井を世間に知らしめた平泳ぎではなく、個人メドレーでリオデジャネイロ五輪の代表に入ったことだ。このとき世間は、平泳ぎも個人メドレーも泳げる、いわゆる『マルチスイマー・今井月』の誕生と見ていたが、そのことが今井を苦しめる結果になるとは誰も想像していなかった。
初めての五輪本番は、思うような力を出し切れずに準決勝で敗退。初出場であったことを考えれば悪い成績ではないものの、この時点で今井は得意であったはずの平泳ぎの泳ぎに大きな問題を抱えていた。事実、リオデジャネイロ五輪のラップタイムを見ると、日本選手権よりも平泳ぎ部分の記録が2秒近く遅れている。その原因は、思うようにキックで水を捉えられていないことだった。
五輪から帰国直後に出場したインターハイでは100メートル平泳ぎに出場し、1分08秒54で優勝を飾る。だが、今井は「キックがうまくいかなくて......」と首をひねる。
夏のシーズンが終わっても、平泳ぎの調子が上がってこない。16年の冬場に出場したどのレースでも、平泳ぎでは思うような記録を出せず、いつしか今井からは笑顔が消えてしまっていた。(2017年10月27日掲載記事)