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アホウドリの移住

きょうのなぜ?
毎日小学生新聞 
生まれた島覚える習性を利用 360キロメートル南に新天地づくり

絶滅の危機にあるアホウドリのヒナを、火山の島から安全な小笠原諸島へと引っ越しさせる試みが進んでいます。新天地では先月、2羽目のヒナが生まれました。プロジェクトの内容を紹介します。【斎藤広子】

乱獲で減少

アホウドリは翼を広げると2メートル以上にもなる日本で最大級の海鳥で、美しい白い羽をしています。150年ほど前まで各地に少なくとも数十万羽いました。現在は世界で数千羽だけ、東京都の伊豆諸島・鳥島と、沖縄県の尖閣諸島にしかいません。絶滅が心配され、国の特別天然記念物に指定されています。

アホウドリを絶滅寸前に追いやったのは、19世紀後半から20世紀前半にかけての乱獲です。アホウドリは大型で上質の羽毛がたくさんとれるうえ、簡単に飛び立てないのでつかまえやすいのです。鳥島では、日本人が組織的に捕まえ、1人が1日に100~200羽殺したという記録が残っています。羽毛は、布団や枕の材料として輸出され、高値で取引されたということです。

乱獲で一度は「絶滅」が宣言されましたが、その後の保護活動で少しずつ数が回復しています。しかし、最も多くのアホウドリがいる鳥島は活発な火山島で、ひとたび噴火すればアホウドリが全滅してしまう恐れがあります。そこで2008年、鳥島から南に360キロメートル離れた同じ東京都の小笠原諸島・聟島にヒナを「引っ越し」させて人の手で育て、すみつかせようという計画が始まりました。

なぜヒナの段階で移住させるのでしょうか。計画の中心メンバーで山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の出口智広さんは、「アホウドリの習性を利用しています」と話します。アホウドリは陸地から遠く離れた島で集団で子育てをし、ヒナは自分が生まれ育った島を覚えています。巣立ちから3~4年でその島に戻り、5歳前後から子育てをします。聟島は安全で人が上陸しやすく、かつて近くの島にアホウドリがいたという記録があるので、引っ越し場所に選ばれました。

70羽移し昨年初の2世

08年から5年間、毎年鳥島からヒナ10~15羽をヘリコプターで聟島に運び、えさを与えて人の手で育てました。計70羽のヒナのうち、69羽が無事に巣立ちました。11年からアホウドリが聟島に戻ってくるようになり、16年1月、「イチロー」と名付けられたオスのアホウドリに初めてヒナが生まれました。イチローは、08年に聟島に運ばれた最初の10羽のうちの1羽で、野生のメスの「ユキ」と夫婦になっていました。今年も、イチローとユキの間にヒナが生まれています。

出口さんは「人の手で育てられていない聟島生まれのヒナたちが、巣立った後に聟島に戻り繁殖するようになって、初めてこの計画が成功したといえると思います」と話します。今回の計画が、絶滅が心配されている他の生き物たちを守るための参考になれば、と願っています。

ミニ知識

乱獲され、絶滅した鳥たち

アホウドリのように人間に乱獲され、実際に絶滅してしまった鳥たちがいます。

有名なのは、アフリカ・マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた「ドードー」です。空を飛べずに地上をゆっくりと歩き、警戒心も薄かったために、食用として人間に捕獲されたり、人間が持ち込んだイヌやネズミにヒナや卵を食べられたりして、17世紀に絶滅してしまいました。

北アメリカ原産のリョコウバトは、19世紀には何十億羽もいたとされています。しかし、「肉がおいしい」と高い値段で取引されたため、多くの人々が捕まえるようになり、わずか数十年で数が一気に減って、20世紀の初めに絶滅してしまいました。

オオウミガラスは、アホウドリと同じ大型の海鳥で、北大西洋や北極海にすんでいました。水中を高速で泳ぐことができましたが、地上ではよちよちと歩き、用心深くもなかったので、肉や卵を食べたり羽毛を取ったりするために、大規模な乱獲の対象になりました。19世紀の半ばに絶滅しています。

特別天然記念物の鳥たち

文化庁によると、動植物や鉱物で学問的に価値の高いもののうち、国が特に重要なものとして保護している「特別天然記念物」は現在75件が指定されています。鳥類では、アホウドリの他に、トキやライチョウ、カンムリワシ、コウノトリ、タンチョウ、ノグチゲラ、メグロなどが指定されています。特定の場所でだけ指定されているものもいます。

絶滅が心配されているものも多く、コウノトリやトキのように、野生ではいったん絶滅したとされた種類を人の手で増やし、自然界に放って野生に復帰させることを目指す取り組みもあります。


お話を聞いた人

山階鳥類研究所研究員 出口智広さん

参考にした資料

山階鳥類研究所のホームページ(http://www.yamashina.or.jp)


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*「きょうのなぜ?」は今回で終わります


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